皮膚病とは皮膚に赤みや湿疹、フケなどが出たり、匂いや痒みが発生したりするものを言います。皮膚病をおこす原因は細菌や真菌などの感染性のものからアトピーやアレルギー、ホルモンの分泌異常などの非感染性のものまで様々です。身近な疾患ですが、原因が様々であるのと色々なものが複合している場合があり、治療に時間がかかったりなかなか良くならないことがあるのも事実です。当院では、皮膚疾患で悩む犬猫が良くなるように、様々な取り組みを行っています。
一般的な皮膚疾患には以下のようなものがあります。
感染性のもの (菌や寄生虫がいるもの) |
膿皮症 皮膚糸状菌症 マラセチア性皮膚炎 疥癬(かいせん) 毛包虫(ニキビダニ)症 など |
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非感染性のもの (アレルギーによるものやホルモンなど内分泌疾患が背景にあるもの) |
食物アレルギー性皮膚炎 アトピー性皮膚炎 副腎皮質機能亢進症(クッシング症候群) 甲状腺機能低下症 脂漏症 など |
腫瘍性のもの (皮膚にできた腫瘍が原因であるもの) |
皮膚リンパ腫 肥満細胞腫 皮膚組織球腫 など |
これらの原因が単独で皮膚に病変を作っているケースもあれば、複数の原因が複合して症状を起こしているケースもあります。
例えば、脂漏症とマラセチア性皮膚炎の併発がそのよい例です。マラセチアとは酵母様真菌で、人などでも皮膚に常在しているカビの仲間です。脂分を栄養分として増殖するので、脂漏症のワンちゃんで増えやすく、それに対するアレルギーを引き起こし、痒みが生じてしまうことがあります。原因として、皮膚の脂分が多い脂漏症が背景にありますが、皮膚炎や痒みの原因となっているのはマラセチアによるアレルギー反応です。症状を治すには脂漏症に対する治療と、マラセチアに対するアレルギー反応のコントロールの両方が必要となります。
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このように皮膚病にはさまざまな原因があるので、原因を明らかにするためにいくつかの検査を行います。検査はやみくもに行うのではなく、原因を明らかにするために最適な検査を選択します。そのため検査に入る前に、皮膚の状態をよく見て病変を直接触り、ご家族から状況の聞き取りを行っています。ご家庭でこれまでの皮膚の状態やライフスタイル(食生活や飼育環境など)をまとめておいていただけると非常にスムーズに進みます。
テープをつけたスライドガラスを皮膚に押しつけてカサブタやフケなどを採取し、特別な染色を行って顕微鏡で細菌や真菌、異常な細胞などを観察する方法です。
皮膚の一部を削り取りスライドグラスにのせ、顕微鏡で疥癬(ヒゼンダニ)やニキビダニなどを観察する方法です。
毛を抜き取り、カビやニキビダニなどがいないか顕微鏡で観察する方法です。
現時点の症状に関連する抗原を大まかに知る検査です。採血するだけなので動物たちへの負担は少なく、花粉や家ダニ、食物に対するアレルギーなどがあるのかどうかを調べることが出来ます。
免疫疾患や特殊な脱毛、腫瘍など一般的な皮膚検査で診断がつきにくい場合に実施する検査です。麻酔下や鎮静下で皮膚の組織を採取して、病理医に診断を依頼します。
以上の検査によって原因を割り出し、それに沿って適切な治療をします。
細菌感染が原因である膿皮症などでは抗菌薬、皮膚糸状菌症などの真菌症では抗真菌薬を処方します。痒みや炎症の程度によりますが、ステロイドを用いることもあります。近年痒みをピンポイントで抑えて辛い症状を取ってくれる薬が開発され使用頻度が増えてきています。月に一度の注射で済むものもあり副作用が少なく痒みを抑えてくれるのが特徴です。
皮膚病変が限定されているときや外耳炎などでは外用薬を用います。全身への影響が少なく、悪くなっている部分に直接薬の効果を届けることができるので有効な方法です。
シャンプーの目的は皮膚に付着したアレルゲン物質や病原体を物理的に取り除くことです。またシャンプー剤を皮膚の状態に合わせて選択することで治療効果を期待することもあります。
例えば・・・
細菌やマラセチアが増えている時は抗菌作用のあるシャンプー、皮膚が荒れて乾燥しやすい時は保湿作用も併せ持つシャンプー、 脂漏症で脂分がとても多い時は抗脂漏のあるシャンプーなどさまざまな種類があります。
皮膚の状態が悪いときは獣医の指導の下、分院でのトリミングを勧める時もあります(メディカルトリミング)。分院のトリミングサロンではマイクロバブルや泥パックを使ってシャンプーをするので皮膚が弱い子や皮膚疾患のある子に効果が高くなっています。
また皮膚疾患の治療に一番大切なことはご家庭での日々のスキンケアがですので、飼い主様にも方法を説明しご協力いただいています。
食物アレルギーの際に実施することが多い療法です。
食物アレルギーによる皮膚症状は食物に含まれるたんぱく質に起因します。そのためアレルギーを起こさないためにはそのタンパク質を食べないようにする必要があります。すでに何が原因かが分かっている場合にはそのタンパク質が含まれていないフードを選びます。まだ何が原因か分かっていない場合には、タンパク質がより分解されたアミノ酸の形で含まれている専用のフードを用います。
選んだフードが合うかどうか判断するには通常6~8週間継続する必要があります。根気が必要ですが適切なフードを見つけることができると、皮膚症状は劇的によくなることがあります。当院ではフード選びに必要なコツなどお伝えしその子に合うフードが見つかるようご提案しています。
皮膚病の治療は日進月歩です。日々新しいことが発見されたり、新薬が出たりと進化しています。その子に合った治療法を見つけるには、飼い主様の協力が必要不可欠です。アトピーやアレルギーは完全に治すことが難しい面もありますが、動物たちがより快適に生活できるよう最適な方法を一緒に見つけていきましょう!