リンパ腫とは?
リンパ腫は、リンパ球と呼ばれる免疫細胞ががん化することで発生します。全身のさまざまな部位に影響を及ぼし、悪性度の高いものは非常に進行が早いことが特徴です。
犬と猫では発生しやすい部位や症状、治療法に違いがあります。
T細胞性とB細胞性に大きく分けられ、細胞形態などから悪性度の高いものから低いものまでさまざまなタイプに分類されています。
当院では犬のリンパ腫症例も数多く経験しますが、近年では特に猫のリンパ腫を診断するケースが非常に増えており、年間10頭以上診断・治療を行っております。
犬のリンパ腫について
犬では多中心型リンパ腫(全身のリンパ節が腫れるタイプ)が最も一般的です。他にも消化器型、皮膚型、縦隔型(胸腔内に発生)、中枢神経型などがあります。
主な症状:
猫のリンパ腫について
猫の腫瘍性疾患の中で最も多くみられる疾患の一つであり、猫の悪性腫瘍の約30%を占めるとされています。猫では消化器型リンパ腫が最も多く、胃や小腸、大腸などの消化管に発生します。その他、鼻腔型、縦郭型、腎臓型などがあります。
従来より、猫白血病ウイルス(FeLV)や猫エイズウイルス(FIV)感染との関連が指摘されてきました。しかし、近年当院で診断されるリンパ腫の猫では、ウイルス感染とは関係なく罹患しているケースがほとんどです。これは、飼育環境の変化や猫の高齢化が影響していると考えられます。
主な症状:
診断方法
治療方法
悪性度の高いリンパ腫は進行が早いため、治療の開始が早いほど良い結果が得られる可能性があります。治療方法として化学療法、外科手術、放射線治療があります。
1. 化学療法(抗がん剤治療)
リンパ腫の治療の中心となる方法です。多くの犬・猫は抗がん剤に良く反応し、**寛解(症状が消える状態)**を目指します。
一般的なプロトコールとして、CHOP療法(シクロホスファミド、ドキソルビシン、ビンクリスチン、プレドニゾロンの併用)が挙げられます。しかし、リンパ腫のタイプやペットの状態、飼い主様のご希望によって最適な治療法は異なります。
当院では、
副作用:
2. 外科手術
外科手術は、消化管に腫瘍ができて閉塞を引き起こしている場合などに、腫瘍を取り除くために行われることがあります。特に消化管型リンパ腫では、腫瘍が進行すると腸閉塞や穿孔を引き起こし、緊急手術が必要になるケースもあります。
また、外科手術後に抗がん剤治療を併用することで、寛解期間や生存期間が延びるという報告もあります。そのため、外科手術が適応となるケースでは、治療方法の一つとして飼い主様にご提案させていただくことがあります。
3. 放射線治療
局所的な腫瘍に対して有効な場合があり、鼻腔リンパ腫などで特に用いられます。
近年では、抗がん剤治療と並行して全身の放射線治療(半身照射)を組み合わせることで、従来よりも遥かに長い寛解期間と生存期間が得られることが報告されています。この新たな治療法により、リンパ腫のコントロールがより長期間可能になり、ペットの生活の質を向上させることが期待されています。
当院では、放射線治療を実施できる専門病院をご紹介し、飼い主様とペットにとって最適な治療法を提案させていただいております。
リンパ腫の予後(治療後の経過)
治療に反応しやすい腫瘍ですが、いまだ根治は難しく、あくまで寛解(症状を抑え、生活の質を向上させること)が目標になります。治療を行った場合、平均生存期間は約6ヶ月〜1年以上ですが、治療プロトコールやリンパ腫のタイプによって異なります。
しかし、当院でも、積極的な抗がん剤治療や、複数の治療法を用いることによって2年以上生存している症例も数多く存在しています。
まとめ
大切なペットの健康を守るために、気になる症状があれば早めにご相談ください。